インプラントにCTは必要か

安易に歯科用CTを撮ってはいけない

最近、歯科用CTのを購入した歯科医師による、CTの撮りすぎが指摘されています。

術前診断のために撮ることはあるでしょう。しかし、手術直後に、問題が発生していないにもかかわらず、患者全員に撮る歯科医師がいるというのです。

海外の文献では、インプラントを埋め込んだ直後のX線(CTレントゲン)の被爆は、 インプラント周辺の治癒に悪影響を及ぼすことが示唆さてています。

もし、歯科医師が、あなたの手術直後にCTを撮影しようとしたら、その理由を伺い、必要ないならやめてもらったほうがいいかも知れません。

CTイメージ

インプラント予定部位の骨の診断法

歯医者さんでよく行うレントゲン撮影は、歯の様子を見たり虫歯の治療をするのにはとても役に立ちます。これなしに語れません。

しかし、X線(レントゲン)の使いすぎは体に良くないと思います。
レントゲン撮影の利点を理解し、 無駄なX線(レントゲン)の被爆は抑えるべきです。

ここで、インプラント予定部位の骨診断法の話に入ります。
インプラント治療においては、

  • 顎の骨の硬さ
  • 顎の骨の形

などを調べることが重要になります。

それを知るために当医院で行われている方法を紹介する前に、
私が心配している、 日本独自ガラパゴス化と言われる「歯科用CT信仰」についてお話いたします。

日本の歯科業界に広がる「歯科用CT信仰」について

インプラント治療を始めたばかりの歯科医師の中には、CTを用いた画像診断が欠かせないと言うものもいますが、 それは、何か足りないものを補うための言い訳に聞こえませんか?

現在、CTメーカーは、開業歯科医院でも経済的に頑張れば購入できる金額にするための努力として、 性能と価格を落としたものを、歯科用CTとして販売しています。
被爆はするのに性能が低いのが懸念材料のひとつです。

本来のCT撮影の利点として、CT撮影の結果で得られるハンスフィールド値(HU値)術部の骨の硬さを測定していました。

ところが、歯科用CT機では、このHU値は測れません
(高価な1機種のみ測れるようになりましたが、普及していません。)

HU値の測れない見せかけのCTで、何がわかるでしょうか?
骨の形態くらいです。

しかし、これはCTでなければわからない情報ではないのです。

被曝のリスクがなく、骨の状態を調べる方法

骨の状態は、CTによる被爆のリスクがなくても、ボーン・サウンディングという方法で調べることができます。 この診断法は、アメリカのUSC(カリフォルニア大学歯学部)など、世界中でも行われています。

骨の形だけでなく、歯肉の厚みも測定できるのが特徴です。
利点として、放射線の被曝がありません

さらに、骨の硬さもCTで予想しなくても、骨を削除していく感触でわかります。
詳しい説明は避けますが、 当院では、Misch CE博士が提唱した骨密度/骨質の分類法を使っています。

しかし、知識や経験に乏しい若い歯科医師が、安易にCTに頼るのは仕方ないことかもしれません。

インプラント治療を安全確実に行うためには、的確な診査・診断とその方法を理解することから始めて頂きたいものです。

骨密度/骨質の分類法 (Misch CE博士.1990)

Density of bone:effect on treatment plans,surgical approach, healing and progressive bone loading.Int J Oral Implantol 1990;6:23-31.

  • D1
    • 大部分が皮質骨
    • ドリル使用時の感触はカシ材またはカエデ材
    • 10段階評価で9〜10の骨強度
    • 主に下顎前歯部にみられる
  • D2
    • 皮質骨と骨梁の粗な海綿骨が歯槽頂に厚い層を形成している
    • ドリル使用時の感触はホワイトパイン材またはスプルース材
    • 10段階評価で7〜8の骨強度
    • 下顎骨全体および上顎前歯部にみられる
  • D3
    • 歯槽頂部の皮質骨層が薄く、海綿骨骨梁が細い
    • ドリル使用時の感触はバルサ材
    • 10段階評価で3〜4の骨強度(D2の50%程度)
    • 主に下顎臼歯部または上顎にみられる
  • D4
    • 大部分が骨梁の細い海綿骨
    • ドリル使用時の感触は発砲スチロール
    • 10段階評価で1〜2の骨強度
    • 主に上顎臼歯部にみられる

院長 相浦淳一からの補足:なぜ、骨質(骨の硬さ)が重要か

なぜ、骨質(骨の硬さ)が重要かといいますと、骨質が悪い(やわらかい)ほど、インプラントの成功率が低いことが指摘されていたからです。

アメリカの大学UCLAの過去の調査では、骨質D1〜D3の成功率は、96〜98%であるのに対し、骨質D4の成功率は86.5%だったからです。

しかし、状況は変わりました。
その後、十年以上たって、骨に埋めるインプラントの性能が向上しました。その結果、現在では、すべての骨質(骨の硬さ)でほぼ同じ成功率となっております。

当歯科医院では、すべての骨に相性の良い「カルシテックインプラント」にこだわり使用しております。
どなた様も安心して相談にいらして下さい。